発達障害(ADHD、自閉症スペクトラム、グレーゾーン)の知育と教育方針

お子さんを医者にするために役立つ情報

発達障害の子の能力を引き出す方法

執筆者:熊野貴文(幼児教室ひまわり塾長)

最終更新日 2022年11月16日

幼児教室ひまわりでは、発達障害のお子さまをお持ちの親御さんからのご相談もお受けしています。
そこでこちらのページでは、「発達障害のお子さんの教育法」についてお伝えします。

幼児教室ひまわりに来られている方のなかで約10%は発達障害のお子さんをお持ちです。グレーゾーンという状況のお子さん、ちょっと変わったお子さんも含めると、もっと比率が高いかもしれません。

たくさんの方からご相談を受けますので、私たちの教室では専門家を招き、発達障害のお子さんの知育や教育法に関しての専門講座も設けています。

発達障害のお子さんをお持ちの場合は、普通の知育の手法や教育法を少しカスタマイズして学ぶことが重要なので、その部分を学んでいただいています。

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ADHDや自閉症スペクトラム(昔はアスペルガー症候群と言われていました)の子のなかにはとても頭が良い子が多いので、その能力をしっかりと引き出してあげたいものです。

そこで、こちらのページでは「発達障害のお子さんの教育法」についてお話しましょう。

かくいう私自身も、軽度のADHDと自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)のグレーゾーンの発達障害児だったので、発達障害の子供の気持ちがよく分かります。

私は小児科医ではありませんが、仕事のなかでいろいろなご縁があり、かなり多くの方のご相談に乗ってきました。ですから、私の経験もお役に立てるのではないかと思います。


さて、幼児教室ひまわりに寄せられるご相談は月に500件以上にのぼりますが、その10%くらいは発達障害についてのテーマです。

そして、発達障害の子をお持ちの親御さんはこんな悩みを抱えています。

お子さんの将来を考えると、心が折れそうになることもあると思います。
こんな状況と向き合いながら、お子さんの教育を進めていくためには、親はどう考えればよいのでしょうか?

順番にお話していきましょう。


療育派 VS 普通に育てる派
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お子さんが発達障害と診断されるのは3歳くらいのことが多いです。

市の児童健診で指摘されるんですね。

それまでは、「うちの子は少し言葉が遅いけど、こんなものなのかな?」という感じで過ごしていたのが、一気につらい状況になるのです。

そして、小児科医の口から発達障害に関する2つの嫌な言葉を聞かされます。

・療育
・障がい者

この2つの言葉を聞くと、心が痛くなってしまいます。

そしてこんな状況になったときに、多くの親御さんは2つの選択を迫られます。


1つ目の選択肢は、「医療を介入させて療育する」という教育方針です。
養護学校に通わせて療育を施し、専門的なプログラムを通じて教育をしていきます。
わが子の障害を克服するために、医療的なアプローチをしていきます。

2つ目の選択肢は、「障害を個性と考え、普通に育てる」という教育方針です。
あくまでも障害を個性として受け入れ、その能力を伸ばしていきます。


この2つの選択肢に関して、小児科医によって意見が分かれてきます。

ここで迷われ、私にご相談される保護者の方も少なくありません。

そこでいつも私がご質問するのは、「発達障害のお子さんを普通に育てるというのは、いったい何を意味しますか?」ということです。

ここを深く理解できれば、この迷いを解決することができることもあります。


「発達障害の子を普通に育てる」とは何を意味する?
発達3

発達障害の子を普通に育てるとは、どういうことなのでしょうか?

それは、「わが子は障害なんてないから、あくまでも普通の子と同じように扱っていこう」と考えることではありません。

これはある意味、少し危険で荒っぽい考え方だと思います。

たとえば、ADHDのお子さんを外で一人で放置してしまうと、突然どこかに行くこともあります。下手したら事故につながる可能性もあると思います。
少なくても、ある程度社会性が身についてないと放置できません。
(実は私自身も幼少期に何度も迷子になって、アナウンスされた記憶があります。)

また自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)のお子さんに、嫌がる習い事を無理にさせてもまともに取り組んでくれません。
習い事を長く続けることは大切ですが、興味が偏っているお子さんに取り組ませるのは難しいです。
まともに練習せず、叱られ続けたり、後から入ってきた子に抜かされたりして、自信を喪失してしまう危険性もあります。

ですから、普通に育てるというのは、「普通の子と同じように扱う」という意味ではないといえます。


では発達障害のお子さんを普通に育てるという本当の意味はどういうことなのでしょうか。

私がいつもアドバイスするのは、「子供が他の子と比較して劣る子であると思わない」という考え方です。

こんなことをお伝えすると、やや弱気な印象を受けます。

「能力を引き出すためには、わが子に特別な能力があると信じてあげるべきじゃないですか?他の子と比較するのもどうかと思いますし、ましてや劣らないという基準は低すぎるんじゃないですか?」

と思われる方もおられると思います。

実はこの考え方自体が少し危険だと、私は思います。

「発達障害のわが子は特殊な能力があるに違いない」という考え方は、発達障害とサヴァン症候群のあいだで少し勘違いしておられます。

もちろん特殊な能力を有しているお子さんも少なからずいます。

ただ、そのような特殊能力を期待するのではなく、「好奇心をしっかりと追及させてあげた結果、特定のことに強くなった」というプロセスに注目したほうが、うまくいきやすいのではないかと思います。

だからこそ、「子供が他の子と比較して劣る子であると思わない」という考え方を最初に持つことを、私たちはオススメしています。

こんな現実的な問題に直面しながら、「うちの子は天才だ、特別な子だ」と信じるのには、かなりの精神力が必要になりますし、心が折れそうになることも多いです。

実際に、発達障害のお子さんは、興味が偏っているだけであって、劣っているわけではないんですね。

でも、日々発生する問題のなかでわが子が劣っていると感じてしまうことが多いものです。
特にコミュニケーションという部分で問題が発生しやすいですから、なおさらそう思えてしまうのですね。

「子供が他の子と比較して劣る子であると思わない」

この考えを理解することが、発達障害のお子さんを普通に育てるということの本当の意味だと思います。

そして、この考え方がベースにあれば、お子さんの得意なことに気が付き、苦手な分野を冷静に受け入れ、上手に教育することができます。

・今興味を持っていることはどんな事かな?
・何をしているときに楽しそうだと感じているかな?
・今うちの子に足りないのは何か?
・中学受験に合格するためには、今から何をすれば良いのかな?
・うちの子がすすんで取り組める習い事は何かな?
・ああ、今日も公文式のプリントを1枚させるのに1時間は覚悟しないとな

こういうった教育に関することの、見通しと覚悟がついてくるのです。
そして、療育との向き合い方も見えてくるようになってきます。


療育にたいして、どのように向き合っていくか?
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たとえば、こんな相談がありました。

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■ Sさまからのご相談

熊野先生

うちの子は発達障害の傾向にあり、コミュニケーションが下手です。
臨床心理士の先生からは、コミュニケーションのトレーニングを勧められました。

でも、私はあくまでも普通に育てたいので、こういう療育を受けさせるべきか、やめておくべきかを悩んでいます。

アドバイスをお願いします。

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Sさまは発達障害のお子さん向きのプログラムを恐れておられました。

そういう支援を受けていると、自分の子を普通に育てていないような気がしていたからでした。


さて、ここまで読まれた方は、この方が勘違いされていることがお分かりだと思います。

普通に育てるというのは、「子供が他の子と比較して劣る子であると思わない」という意味ですから、コミュニケーションが苦手ならそこを強化してあげれば良いのです。

大人でも、会話が苦手な人が話し方教室に行ったりしますよね。

それと同じなんですね。

ですから極論すれば、療育のプログラムも「習い事の1つ」みたいなものです。

「子供が他の子と比較して劣る子であると思わない」という認識がしっかりできれば、それくらい軽い気持ちで考えられるようになるんですね。

療育という言葉にすら、過敏に反応する必要もありません。
療育を取り入れても良いですし、それ以外の手段で教育しても良い。
わが子の苦手な能力を補強し、得意な部分を伸ばしてあげて強く育ててあげるだけです。


このあたりがブレなくなると、発達障害のお子さんの能力を引き出せるようになります。

ある一人のお子さんのエピソードをご紹介しましょう。


「知能指数69」の子のチャレンジ

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私が教育に携わった自閉症のT君の例です。

T君(5歳)は、3歳の時に「自閉症」と診断されました。

3歳になっても全く言葉を話さず、自分の要望を母親に伝えることも出来ませんでした。
お茶が飲みたい時も、母親の手を引っ張って、冷蔵庫のところに連れて行きます。
(これは「クレーン現象」といって、言葉の話せないお子さんの典型的な状況です。)

T君のお母さんは、ちょっと変わったわが子に対して、

「この子は天才だ。何か特別な才能があるのかも・・・」

と期待し、ディズニーの英語システムや七田チャイルドアカデミーなどに取り組ませていました。

しかし、T君は全く反応を示さず、授業にも全く集中できない状況が続きました。

「うちの子は、今は興味がないだけだよね・・・」

発達が明らかに遅れているT君に対して、ご両親はこのように自分に言い聞かせていました。

でも、心のどこかで、「もしかするとうちの子は、やばいかも・・・」という不安が芽生え始めていました。


そして3歳の時に、T君の両親につらい宣告が下されます。

3歳の時の検診の時に、「知能指数が69」と伝えられ、

「T君は自閉症です。知的障害もありますので、お子さんは一生介助が必要でしょう」

小児科医から、このような言葉をかけられてしまい、両親の希望は打ち砕かれ、目の前の世界が真っ暗になりました。

でも、T君のお母さんは、「わが子のために、出来ることをやってあげたい」と願い、決して諦めませんでした。


まず取り組んだのは、「ABA」という療育方法。
ABAというのは、一言で言うと、「子供の興味を引きつけながら、学習を進めていくという学習法」です。

しかし、T君の場合はABAを実践しても劇的な変化が見られませんでした。


そしてあまり大きな変化が見られないまま、「幼稚園に入学する時期」が来てしまいました。

「普通の幼稚園に通わせるか、それとも養護支援の幼稚園に通わせるのか?」

お母さんは、悩みました。

悩みに悩んだ結果、普通の幼稚園に行くことを選択しました。

幼稚園に通った後も、T君は問題児です。

例えば、運動会の時も、先生の指示に従わず、ずっと「砂いじり」ばかりしているような状況でした。幼稚園の中で、唯一「おむつ」が取れておらず、プールも一人だけ見学でした。

幼稚園の授業中も、魚ばかりを見ていて全くその活動に参加しませんでした。

「わが子は、もう普通には生きていけないのか・・・」

両親は、そろそろ覚悟を決めようとしていました。


しかしそこから奇跡が起こりました。

T君が目覚ましい発達を遂げ、みるみる言葉を話すようになり、周囲の子と遊ぶようになりました。
習いごとにも積極的に参加し、スイミングプールでも「一人で泳げる」ようになりました。

5歳になった今では、平仮名、カタカナの読み書きができ、簡単な足し算もできます。

今のペースでいけば、もうすぐ公文式のB教材です。

公文式のB教材というと、小学校2年生の勉強ですから、T君は「5歳で7歳児の勉強が出来る」ということになります。つまり、IQで言えば約130です。

このまま良いペースで進めば、灘中学合格への最初の関門である、
「小学校3年生で公文式のF教材を終了させる」という目標を達成できる可能性が十分にあると思います。

ここを達成することができれば、灘中学も見えてきますね。

IQ69の知的障害児だったT君。
たった2年で大逆転です。

T君のお母さんは、お子さんに灘中学校を目指させると、今ではとても前向きな気持ちになっています。

このT君に対しての教育方針は、こちらのオンライン講座の内容となります。


希望を捨てないことの力
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さて、T君の話が長くなってしまいましたが、この実例は発達障害のお子さんをお持ちのお母さん、お父さんにとって、非常に勇気づけられるのではないかと思います。

発達障害で多いのは、

「自閉症スペクトラム」
「ADHD」
「学習障害」

このあたりです。

「色々な状況が重なりあっている」ということもありますので、1人で何種類もの診断がされることもあります。

このような「病名」ですが、「病気」であると絶対に考えないで下さい。

なぜなら、「わが子は発達の病気だ」と思ってしまうと、その認識が親とお子さんの両方の「脳の深い部分」に入ってしまうからです。

「発達の病気を持っている子供」=「将来が不安な子、保護が必要な子」

という自己認識が作られ、どんどん悪い方向に事態が進みます。

発達障害と診断されたとしても、それをお子さんの個性と考えることが大切です。
すでにお話しましたように、「わが子が劣るわけではない」という認識を持ちながら、それを個性として受け止めていきましょう。

発達障害の能力を引き出すためには、親の側に十分な注意が必要なのは事実ですが、その能力には計り知れないものがあります。

このことを意識して頂くことは、お子さんを医者にする上で、本当に大切なことです。


発達障害のお子さんをお持ちの方は、

・その特徴を踏まえながら、注意すべきポイントはしっかりと押さえておく(守りの部分)

ということを徹底しながら、

・お子さんの中にある可能性に注目し、その才能を上手く引き出す(攻めの部分)

という両方を心がけながら、お子さんと接する必要があります。


大切なのは、「両方」という点です。

発達障害のお子さんをお持ちの両親の中には、「守りの部分」か「攻めの部分」のどちらか1つだけに、集中している方が多いです。

守りの部分に集中しすぎると、お子さんの能力は伸びずに終わってしまいます。
逆に攻めの部分に集中しすぎると、コミュニケーションが取れなかったり、勉強を急に投げ出したりしてしまいます。

これは発達障害のお子さんを教育していくうえでとても重要な部分だといえますので、必ず両方を意識しながら、これからの教育を進めて下さい。

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こちらのページでは発達障害のお子さんの教育法と注意点についてアドバイスをお送りしましたが、私たちの教室では発達障害のお子さんの知育にかなり力を入れて取り組んでいます。

こちらの専用ページ(発達障害のお子さんをお持ちの親御さんへ)に私たちの方針をまとめていますので、よろしければお読みください。

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